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出題:1スレ目 800 822 せっかく思いついたし投下しとく 女「コロッケそば? そんなものが本当にあるのか?」 男「それがあるんだって! あー、また食いてぇ。あれ美味いんだよ」 女「よ、良かったら私が作ってやらないでもないぞ?」 男「マジで?! やった!」 女「出来たぞ」 男「あれ? コロッケだけ? そばは?」 女「食べてみろ。話はそれからだ」 男「まぁいいか。頂きます……んぅ?」 女「変な声を出すな。ちゃんと中にそばが入っているだろう?」 男「あー、そう解釈した訳ね。これだとそばコロッケだろ」 女「……。あ、味は! 味はなかなかだろう?」 男「……お前、食べてみた?」 女「いや、まだだが。どれ、一つもらうぞ」 男「どうだ?」 女「……ごめん」 男「いや、こっちこそすまん。今度一緒にコロッケそば食べに行こうな」 女「うん」 イメージとしては、茹でたソバのざく切りに衣付けて、 後は普通のコロッケ見たく揚げたやつ そのままだと衣付けにくいので、ノリで束ねてある (柔らかめに茹でてくっ付ける手もあるけど、そばの歯ごたえが無くなる) 女的には醤油を付けて食べるのがおススメ 断面は若干グロい という裏設定 839 1 コロッケ「いいえ、私は、蠍座の女♪」 キャベツ「お前男爵イモで出来てるじゃねえか」 2 コロッケ「ウィーン、ガション! ウィィーン!」 食パン「踊れてねえぞ」 3 コロッケ「揚~げれ~ば~コロッケだ~よ~♪」 コロ助「コロッケだけで十分ナリ」 コロッケの“そば”ってことで 841 女「ホームステイか。英会話は大丈夫か?」 男「あぁ。アメリカ人だけど、日本語もちょっとだけ話せるらしい」 女「それなら安心だな」 英「ハジメマシテ! オセワニナリマース」 男「ああ、な、ないす、とぅ、みーちゅー。ゆっくりしていって下さい」 英「Thank you!」 男「えーと、何か食べたい物とかありますか? あー、わっと どぅーゆーわんとぅいーと?」 英「Well……オソバ、タベタイデス! And……Oh! コロッケ So bad! I hate deep-frying thing. Sory.」 男「ソバが食べたいんですね、分かりました。夕食に作りましょう」 男「後半何言ってるか分からなかったな。でもコロッケそばとか言ってたな……。よし!」 男「夕食ですよ。えーと、ゆあ、ふぇーばりっと、ふーど、コロッケそば! おーけー?」 英「Oh……コロッケ on the 蕎麦……」 846 老舗蕎麦屋の一人娘「あたし達は、やっぱり相入れない存在なのかな……」 コロッケ屋の一人息子「そんなことはない。俺はずっと、お前の傍にいる」 851 846の続き 老舗蕎麦屋の一人娘「あたし達は、やっぱり相入れない存在なのかな……」 コロッケ屋の一人息子「そんなことはない。俺はずっと、お前の傍にいる」 老舗蕎麦屋の一人娘「ありがとう……これからもよろしくね!」 コロッケ屋の一人息子「あぁ。二人で一緒にお店頑張ろう!」 蕎麦屋の親父「で、二つの店くっ付けた訳ですが」 コロッケ屋の親父「これがこの店の看板メニューになった訳ですな」 蕎麦屋の親父「コロッケそば……」 コロッケ屋の親父「別々に出すとかセットメニューにするだろう、常識的に考えて……」
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imageプラグインエラー ご指定のURLはサポートしていません。png, jpg, gif などの画像URLを指定してください。 作者:駄作先生 作品概要 後でここに記載 ジャンル 作品を読む
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タイトルが無いものに関しては無題で。 とりあえずまとめてるだけなので、問題があるようであればお手数ですが作者さん修正お願いします。 『アタシ帰る』 Snow White 鐘が鳴るなり プレゼント クレヨン 無題その1 枯れ木 無題その2 冬の味覚 『アタシ帰る』 作:◆phHQ0dmfn2 お題:「12」「鐘」 1/2 ヤバイヤバイヤバイヤバイ! 「あの、アタシそろそろ帰らなきゃ……」 マジヤバイ、早くしないと。 「何だい、まだいいだろ?」 目の前の男が不服そうに言う。金髪のイケメンで、おまけに超の付く大金持ち。 「遅れると、帰りの乗り物が無くなっちゃうんですよ……」 「何だ、そんなことか。大丈夫、僕がちゃんと送らせるから」 人の良さそうな顔でにっこりと笑う男。 あーもう! 金持ちって、どうしてこんなに空気読めないんだろ。育ちがいいせいか、 人の言葉は何でも額面通り素直に受け取って、裏を読もうとしない。アタシは「早く帰ら せろ」って言ってるんだってば、少しは察しろ! 「その、アタシ門限があるんです。家族が色々とうるさくて……」 ウチのババアはマジでウザい。ガミガミ怒鳴るわ家事は全部押しつけるわ、最悪の女。 「そうか、お嬢様ってのも大変だね」と男。 別に『お嬢様』だなんて一言も言ってないけどね。まあ勝手に勘違いしてくれるなら、 それでいいや。 「でも、君だってもう子供じゃないんだ。少しは自分のしたいようにしてもいいんじゃな いかな?」 だーかーら、アタシは帰りたいんだってば! それに何だかんだ理由つけてるけど、下心見え見え。 「ほら、まだ十二時にもなってないよ?」 男の言葉で時計を見る。ゲッ、もうこんな時間じゃん。 「本当にごめんなさい、もう行かないと。今日は楽しかったわ」 そう言って、半ば強引にパーティー会場を抜け出した。 2/2 やっぱりアタシには、こんなセレブの集まるパーティーなんて合わない。言葉遣いも作 法もよく知らないし、なんつーか住む世界が違うみたいな。 取りあえず外に出ないと……あーもう、慣れないヒールなんか履いてくるんじゃなかっ た。ドレスもそう、走りにくいったらありゃしない。 「ぬわっ!」 案の定、盛大にコケて、靴が脱げてしまった。 「待ってくれ~」 後ろから、さっきの男の間抜けな声がする。しつこいなぁ、どんだけアタシとヤりたい んだよ。さっさと逃げないと。 急いで立ち上がり、裸足のまま走り出す。この方が走りやすい。毎日の家事で鍛えた足 腰を活かして、さっさと男を振りきる。アンタみたいなおぼっちゃんとは鍛え方が違うん だ。 ――ゴォーン……ゴォーン…… 十二時の鐘が鳴り響く頃、何とか表に辿り着いた。ギリギリセーフ! それにしても疲れた、服も髪もボロボロだ。 家に帰り着き、こっそりドアを開けると、ババアが鬼のような形相でアタシを睨んでい る。アタシを見るやいなや甲高い声で怒鳴りつけてきた。 「一体こんな時間までどこをほっつき歩いてたんだい、シンデレラ!」 Snow 作:◆NN1orQGDus お題:「鐘」「冬」 1/2 リンゴーン、リンゴーン。 大聖堂の鐘の音が灰色の曇り空に染み込んで行く。 クーポラの尖端は白くモヤがかり、輪郭のピントがずれたみたいにぼんやりとさせていた。 そこ本来は立ち入る事の出来ない場所のはずだが、見覚えのある人影が見えたような気がする。 しかし、それはただの見間違いだ。冬の物悲しさに惑わされただけに過ぎないだろう。 「雪が降りそうですね」 連れのじゃじゃ馬娘が手のひらに白い息を吐きかけながら、こちらをチラチラと窺ってきた。 足元に背筋をピンと伸ばして、生意気そうな顔をツンと澄ました黒猫を連れ立っている。 「さあな。俺は天気の番人じゃない」 カツ、カツと革靴の底が、石畳をリズミカルに叩く。 「雪が嫌いなんですか?」 「降るだけなら別に構わないけどな。積もると誰かさんが滑って転ぶ」 好きとも嫌いとも答えない曖昧な返事に、当の誰かさんは顔を朱に染めて此方をじいっと睨んできた。 「――私、転びません!」 「別にお前の事だって言ってないだろう。それとも思い当たる節でもあるのか?」 「――あう」 図星なのか、耳まで真っ赤にした拗ねた顔でムムムと口ごもる。 「まさか本当にそうだったとはな」 「違います! 違わないですけど、雪が凍ってツルツルしてたんですよ!」 「そうか。俺は踵の高い靴でも履いてたのかと思ってたけどな」 「――なんでそれを?」 拗ねた顔からキョトンと顔へ。まるで百面相だ。純真と言うよりは天然という言葉が合っている。 まあ、そんなだから俺はコイツを放っておけない――否、コイツに惹かれたんだろう。 「靴でも買いに行くか」 「え、嬉しいんですけど……良いんですか?」 怪訝そうでいて、それだけど嬉しさの混じった顔になる。 「ああ。懐が寒い訳じゃないから靴の一足や二足は買える。もっとも、ガラスの靴って訳にもいかないけどな」 「ありがとうございます!」 顔を綻ばせながら腕に抱きついてきた。それだけ嬉しいのだろうが、少しばかり恥ずかしい。 「よせ、マシュウが見てる」 黒猫――マシュウが此方を眠たそうな瞳で見つめている。そして、ニャアと一鳴きしてスタスタと足早に去っていった。 夫婦喧嘩は犬も食わないらしいが、猫はノロケを食わないのだろうか。 「――雪?」 砂糖の様な粉雪がサラサラと空から舞い降りてきた。 2/2 俺は彼女の手を取り急かすように、急ぐように走り出す。着いてくる足音が遅れないスピードで。 彼女の手はほんのりと温もりを帯びていて、冷えきった俺の手を温めてくれる。 俺の冷たい手は彼女にとって不快ではないらしく、ギュッと握り返してきた。 「躓いて転ぶなよ?」 「転ぶ前に、助けて下さいね?」 「ああ、お前のドジは織り込み済みだ」 「――あう」 リンゴーン、リンゴーン。 大聖堂の鐘が響く。舞い降りる粉雪と共に。 寒空の下、フィレンツェの街に。 了。 White 作:◆NN1orQGDus お題:「鐘」「冬」 1/2 彼女は、寒さのせいなのか頬を真っ赤にしていた。赤いミトンの手袋をした手に、はあっと吐息を吐きかけてもいる。 白いもやみたいな吐息は、ソフトフォーカスをかけたようにあどけない、だ幼い彼女の輪郭をぼんやりとさせた。 「寒いのかい?」 ずっと小さい位置にある頭に手を置き、撫でる。いきなりの事で驚いたのか、目をぱちくりと、白黒とさせた。 「え……はい、大丈夫です」 石畳に視線を落とし、消え入りそうな小さな声でポツリと答える。 「遠慮はいらないよ。寒かったら寒いと言ってくれた方が、僕は嬉しい」 撫でるのをやめた手を持ち上げると、微かに良い匂いがする。 「香水かい?」 「ちょっとだけ……ですけれど」 ただでさえ小さすぎる彼女が肩をすぼめて更に小さくなる。 「猫背はいただけないな。姿勢はちゃんとしないとね」 丸くなった背中をツンとつつき、首に巻いていたマフラーをほどいて、彼女の首筋にそっとかけ直した。 「寒くないですか?」 「ああ、君よりはね。僕はこう見えても鍛えているんだ」 力こぶを作ってみせると、ツボに入ったのかクスクスと笑みを溢し始める。 「君の悪いところは遠慮がちな所だね。少しはワガママを言ってくれないと、僕が困る」 「そう、ですか?」 「ああ、そうとも」 難しい年頃のせいなのか、彼女は俯いて押し黙ってしまう。足取りは重そうで、トボトボと。顔色は暗く重くて浮かんでいない。 歳の差がありすぎるが悪いのだろうか、彼女は僕に追い付こうと背伸びをする。だけど、その背伸びは彼女の為にも、僕の為にもならない。 気負ってしまうのは仕方ない。でも、僕は彼女の年相応の明るい笑顔が見たい。 「そうだね。プレゼントは何が欲しい? 万華鏡? ヌイグルミ?」 努めて明るく振る舞う僕に、彼女はそっと上目使いの視線を寄越す。 「――話が聞きたいです。昔の、貴方の」 「話しかい? そうだね、この前パスタが美味しい店を見つけたんだ。そこで何か食べながら話そうか」 「はいっ!」 良い返事だね、と頬をつつくと、大聖堂の鐘がリンゴーンと響く。そして、灰色の空から綿みたいな雪が舞ってきた。 彼女はそれを手で受け止めて、嬉しそうに顔を綻ばせる。 赤いミトンに白い雪。儚くあっというまに融けていく。 「何で雪って見上げる時は灰色なのに、下に落ちると白いんですか?」 2/2 「光のせいだね。降る時は自分が影になって黒くなるんだ。下になれば影が無くなって白くなるのさ」 「なんでも知ってるんですね」 「ああ、そうとも」 彼女の幼い笑顔は、僕の冷えきった身体と心をとかしていく。なんだかそれが嬉しくて、彼女に笑みを返すと、訳がわからないのかキョトンとした顔になる。 「そう言えば、日本では鐘に書かれた文字が原因で戦争になったそうだ」 「酷いですね。鐘に罪はないのに」 「いつだって罪を犯すのは悪い大人さ」 「その鐘の音ってどんな音色だったんでしょうか」 「たぶん、綺麗な音色だよ。きっと、ね」 暗く沈んでいきそうな彼女の横顔に、僕は悪戯心を起こして、柔らかそうな頬を、ちょんと摘まんだ。 「え、ええ!? ふえぇ!?」 キャッと悲鳴を上げて慌てふためく彼女が可笑しくて、思わず笑ってしまった。 「そんな、いきなり酷いです!」 ぷくっと頬を膨らませる彼女は年相応の顔を見せてくれる。 「そう、それそれ。そういう反応を見せてくれないとね」 「何でですかっ」 怒気を孕んだ口調に、ごめんと謝まる。「僕はね、自然な君が好きなのさ」 「あう」 彼女は火が着いた様に真っ赤になって黙り込む。 そんな彼女が可愛くて、つい僕は彼女の頭を撫でようとするけど、彼女は手を払ってハッキリと拒否した。 なんで、と良いかけたけど、横目で睨んでくる彼女は僕の腕に腕を絡めてきた。 「子供じゃないですから、こうしてください」 「ああ、そうだったね」 腕を組んだ僕達を、ガラス色の雪が閉ざす様に舞い降りてくる。 リンゴーン、リンゴーン、リンゴーン。 大聖堂の鐘の澄んだ音色は、祝福の鐘だろうか。 嬉しそうな彼女を見ていると、本当にそう思う。 了。 鐘が鳴るなり 作:◆NN1orQGDus お題:「鐘」「冬」 牡蠣を食ったら鐘が鳴らずに腹がぎゅるるるると鳴った。どうせ鳴るならと金に成りたかった。 ピーピーと腹を下して十六連打並みの速さでトイレとコタツの間を行ったり来たりだ。 夜通し運行してたら、知らぬ間にトイレで朝を迎えていた。洋式で良かった。本当に良かった。 いや、良くない。水洗トイレだったのは幸いだけど、トイレで眠りこけてしまうのはいかがなものだろうか。 這いつくばって、やっとの思いで電話で119番に助けを求めたら、誰も電話にでんわ。 後で聞いたら救急車をタクシー代わりに使ったオバチャンがいたらしい。その対応に手間取ったそうだ。 世間の風が世知辛い。たたでさえ一人者には寒い季節なのに、吹き付ける風はスペイン風邪みたいに身に染みる。 どうせだったら六甲おろしみたいに熱ければ良いのに。十年前なら凍死する程寒いけど、今ならそれなりに暑苦しい。 兎に角、すったもんだがあって病院に運ばれた。 診断結果はノロウイルスと十二指腸炎がなんたらかんたら。詳しい病名は怖くて聞けなかった。 臆病風に吹かれやすいから正確な病名の告知はしなくて良いと言ったら、医者にゲラゲラ笑われた。 取りあえず入院しないと駄目だとのお達しで、入院する羽目になった。 どうしよう。師走も良いとこそろそろ年末だってのにハメを外す事も出来やしない。 シャバにいたらサンタ狩りやトナカイ鍋だって思いのままの筈に、今の俺はベッドの上でハリー!ハリー! とポタポタ落ちる点滴の滴を見る事だけしか出来ない。 いやだねえ。辛気くさいったらありゃしない。 クリスマスなのに景気が悪いからケーキも食えない。もちろん年越しソバだって食えない。 美人の看護師さんにあんたの側にいたいって言ったら痛い人を見る生温かい視線で見られるわで悲惨散々、鎌倉幕府だって滅亡する。 気付けばゴーン、ゴーンと除夜の鐘が聞こえてくる。 ちくしょうめ、どうせ突くならケチな事言わないで素手で突けってんだ。 鐘なんて柿を食ったら鳴るだけで十分だ。重要文化財なら別の与太話になる訳だけですが。 お後がよろしいようで。 了。 プレゼント 作:◆NN1orQGDus お題:「冬」「12」 1/2 テディベアが11人。全部プレゼントとして貰ったものだ。みんな同じテディベアだけど一つ一つ個性がある。 個性だけじゃなくて、密かに名前だってつけたりしている。 たとえば一番右のネルソンはつぶらな瞳がチャームポイントの生真面目さんだけど、左から三番目のイソロクは凛々しい顔の割には悪戯好きでギャンブル狂。 一つ一つに名前と個性を付けてあげれば見ているだけでも楽しい。 アフタヌーンティーを楽しんでいると、コン、コン、コン。控え目なノックが三回、几帳面なリズムでドアが叩かれる。 ベルがあるのだから押せば良いのに、あえてノックをする人は一人しか知らない。 「どうぞ」 ドアの向こうに声をかけると、あまりたてつけのよろしくないドアがぎいっと軋んだ。 「やあ、こんにちは」 グレーコートに白い雪を散らばせながら、綺麗に包装された箱を胸に抱いて彼が入ってきた。 はにかみ顔であるけれど、外は寒かったのか眼鏡が曇っている。 勝手知ったる他人の家とはこの事なのか、彼は荷物をテーブルの上に置いて、スタンドにコートをかける。 「紅茶で良い?」 「いや、これで良いや」 彼は私の対面に座ると、飲みかけの紅茶に口を付けた。何か違和感があるのか、僅かに眉をしかめる。 「ちょっと甘いね」 「私は甘いのが好きなの」 「ふーん、なんだか機嫌悪そうだね」 「いえ、別に?」 機嫌が悪い理由は沢山ある。 お子様みたいな味の好みを指摘されたのが悔しくて、私はプイとソッポを向いた。 窓の向こうに見える街は、ガラス色の雪に閉ざされている。まだクリスマスの四日前、どうせだったらホワイトクリスマスになれば良いのに。 「ああ、そうそう。これ開けてみてよ」 「なに?」 包装を綺麗に剥がし中身をみると、それは予想通り――テディベアだった。 「ヌイグルミをプレゼントされて喜ぶ年じゃないんだけど」 「そうだったかい? それはすまない事したね」 強がってみたけど、やっぱりテディベアは可愛くて、私は衝動的に抱き上げてしまう。柔らかくて温かくて良い気持ち。思わず、うわあと声をあげてしまった。 「喜んでいただいて嬉しいね」 「喜んでません!」 彼の笑顔と図星をつかれたのがあまりにも悔しくて、テディベアを抱きつつ紅茶の残りをぐいっと一息に飲み干した。 2/2 「さっき僕が飲んだけど、良いのかい?」 言葉の意味を妙に勘繰ってしまった私はむせてしまうけれど、耐え難きを耐え忍び難んだり色々堪えて、努めて平静をよそおう。 「大丈夫かい」 優しくされるのがなんだか非常にムカつく。 「ええ、大丈夫ですとも」 「そうかい。それなら安心した」 「心配される筋合いはありません!」 沸き上がる怒りを押さえながら答えるけど、口調がやや早口に、強くなる。 私の言葉が終わらないうちに、彼は窓際に歩み進んだ。窓の向こうは既に暗くなっている。それでも雪は降り続いていて、全てを濃い闇色に染め上げている。 「まあ、安心したよ。君が気落ちしてるっておばさんに聞いたからね」 ええ、そうですとも。 一週間ほど前に誰かさんが綺麗な人を連れているのを見かけた。多分その女の人は恋人で、つまり、私は失恋した。 失恋して気落ちしない女のコはそうざらにはいない筈だ。 それでもその誰かさんの顔を見ると憎らしくとも嬉しくなってしまう私の単純な思考回路が恨めしい。 今日だってクリスマスを前倒しして私にプレゼントを渡しに来て、当日は彼女さんとデートなのだろう。 はっきり言って優しいけれど優しくない。彼の主体性の無さ、八方美人な性格が私の苛立ちを加速させる。 解りきった事だけど、彼にとって私は近所の女の子でしかない。 歳の差という見えないバリアは万里の長城よりも堅くて難攻不落なのだ。 「ねぇ、クリスマスは空いてるかな?」 唐突な言葉に彼方に行っていた思考が此方にぐいっと引き戻された。 「空いているかもしれないし、空いてないかもしれない」 振り向かずにテディベアをぎゅうっと抱き締めた。今の顔はとても酷い顔だろう。とてもじゃないけど彼にこんな顔は見せられない。 「出来れば空けといてくれないかな」 「バカじゃないの? 折角のクリスマスなんだから好きな人と一緒にいれば良いじゃない!」 駄目だ。涙の堰が決壊して、更に感情が暴発した。憎まれ口なんて叩きたくないのに叩いてしまう。 抱き締めたテディベアに顔を埋める事だけしか出来ない。 トン、と肩を叩かれるけど、顔をあげられない。 「うん。だから君といたいんだって言ったら迷惑かい?」 涙でくしゃくしゃな顔は見せられない。だけど涙は悔し涙じゃなくて嬉し涙だ。 テディベアが十二人。みんな嬉しそうに笑ってる。 ――勿論、彼も、私も。 了。 クレヨン 作:◆NN1orQGDus お題:「鐘」「12」「冬」 子供の頃、クレヨンが好きだった。私は12色しかの物持っていなかったから、24色に憧れていた。 その中でも一番憧れたのは銀のクレヨンだ。キラキラと、ピカピカと光っていて、とても綺麗だった。 あの色で空や雲、海を描けたらさぞかし幸せだろうなぁ、そう思っていた。 12歳の冬、小学6年生の時にバラ売りの物を画用紙と一緒に小遣いで買った。 思うままに描いてみたは良いのだけれど、ネズミ色みたいな雲と水平線は幼心にがっかりして、ちょっとしたトラウマになった。 だけど、今では良い思い出だ。 それでも、銀のクレヨンは短くなってしまったけどとても綺麗で、大事にとっておいてある。 苦くて悲しいけど、甘くて嬉しい、子供の頃の大事な思い出だ。 「なあ、なんでアンタはそんなにパステルが好きなん?」 モダンアートの課題を描いていたら、友達が不思議な顔で、訊ねてきた。私は手を止めて答える。 「んー、好きなんだよね、パステル」 「あー、アンタそんな感じやわ。ペールトーンやね。味で言うとだだ甘やね」 ペールトーン。うすく淡く、女性的な弱さを持ち合わせた優しい色だ。 「そうね、あんたをたとえるとポスカラかなぁ」 「ビビッドやね。鮮やかで目立つからウチにピッタリやわ」 「生きが良すぎて騒々しいけどね」 なにか思うところがあるのか、ほっぺたを膨らませてなんとぉー、と怒りだした。 どうにも仕方がないので頬を挟むように両の人差し指でつつく。 「なにすんのぅっ!」 「うん、なんでだろうね。そこにほっぺがあるからだろうね」 「そんな理由じゃ納得できひんっ!」 「大丈夫。あんたを味にするとケレン味だから」 「ケレン!?」 んが、と唸って愕然として、金魚みたいに口をパクパクと動かす彼女は表情がコロコロと百面相して面白い。 「褒めてるつもりだけどね。私にはあんたみたいな味が出せないし」 「それ、褒めてないやろ!」 キーンコーンカーンコーン。 丁度良いところで終業のチャイムがなる。 先生の課題は次回に持ち越し、との言葉に安心したら、私達二人は後で職員室に来るようにと言われた。 「アンタのせいで怒られるんや」 「いーや、その言葉は熨斗を付けてお返しします」 二人揃って怒られるのも、銀のクレヨンみたいに、きっと後で大事な思い出になるだろう。 ――多分、いつまでもキラキラと綺麗に光っているに違いない。 無題その1 作:創る名無しに見る名無し お題:「12」「鐘」「冬」 「そんなに回してもチャンネルの数は変わらないぞ」 ボソボソとした声が横合いから聞こえる。 うるさい、そんなの分かってる。 第一、回すってなんだよ。昭和かよ。 年末のある夜、私は兄と二人で居間のコタツに足を突っ込んでいた。 親は二人でどこかに出ていった。家には私たち二人だけが残されている。 見たい番組が無かったのでチャンネルは適当にボタンを押して決めた。 結果、テレビからは青い狸の声が聞こえてくる。 兄は黙々と本を読み続けている。 さきほどの一声がおそらく今夜で初めての発言だ。 快活で明るかった兄。 私に懐かれて、友達の前で苦笑いしていた兄。 毎日遅くに帰って来て、それでもニコニコしていた兄。 その面影はどこにも無い。 きっとテレビのスイッチを切れば、この部屋の中では本当に何の音もしなくなるだろう。 そうしてその後、じっと見つめ続けていたら流石に気になって構ってもらえるかな。 普段家に引きこもって家族とも話そうとしない兄、 最近はその存在を邪魔にしか感じないのに、今は何故かそう考えた。 それほどに私は退屈していたのだろう……私は自分で理屈付けた。 そうしてテレビの電源を切って数十分。 除夜の鐘は鳴り止んだが、結局部屋の中で何か音を出したのは時計の針だけだった。 兄はひたすら本を読んで――一冊読み終えたのに次の本を取り出して――私に話しかけようとはしなかった。 とても寒かった。 部屋の中には暖房が効いている筈なのに、薄っすらと汗をかいているのに、私は真冬のような寒さを感じていた。 枯れ木 作:◆NN1orQGDus お題:「冬」「金」――金……だと……? 冬の寒さが骨身に染みる。季節が冬なら景気も冬で、財布の中身は凍死寸前だ。 親の脛をガジガジ齧ってキャッキャウフフと季節外れの人生の春を満喫してるバカップルが腹立たしい。 ついつい奴等のご両親の心労をお察しして欠伸と一緒に涙を流してしまう。 何年かして社会に出て世間の風に吹かれれば、語り合う愛は砂上の楼閣よろしく崩れ果て、金をたかり合うこと請け合いだ。 そもそも愛を語っても一銭にもならない。 別れる時に水を掛けられて、とっておきの吊しのスーツをクリーニングに出す羽目になるから収支的にはマイナスだ。 騙るなら息子を語れ。見知らぬ人に電話して舌先三寸口八丁で誤魔化せば金になる。 その後は八丁堀か鬼平に取っ捕まるかは運次第。捕まって塀の中に入る奴は運がない奴だけだ。 運試しするなら宝くじの方がマシかも知れない。 なけなしの金で夢を買って、当たれば億万長者にだってなれる。夢が破れても金の使い方を妄想する楽しさがある。 間違いなく三百円は当たるからタバコ銭ぐらいにはなるだろう。 値上げされたら素直に諦めよう。諦められない頑固者は四の五の言わずにストをしよう。 二の句にでもはご法度だ。海の向こうでやったら偉大なる将軍様のケツに火が着くガスを吹く。 何にせよ、議事堂前ならいけすかないバカップルの姿はない筈だ。 お後がよろしいようで。 了。 無題その2 作:創る名無しに見る名無し お題:「12」「鐘」 「ふふふ、いい感じにカップルを呪っているようだね。四捨五入すると30男」 「余計なお世話だこんちくしょう。それにまだ25才だ! わざわざ四捨五入するな!」 「ふふふ、私は四捨五入すると20だぞ」 「四捨五入しなくても20だろ! お前は!」 一人さびしく粉雪の舞う冬空を歩いていると、唐突に声を掛けられた。 目の前に現れたそいつは、口を笑みの形にして俺を見ている。 あー、くそ! 分かってるよ! クリスマスなんてつぶれちまえなんて思ってるよ! カップルなんて、しっと団にでも襲われちまえと思ってるよ! だからって、彼女いない歴=年齢の俺をわざわざ蔑みにくるなよ! 「今日は12月24日。クリスマスイブだというのに相も変わらずお寒い御様子で」 「うるせーなー」 俺の態度を露骨に無視し、そいつは腕を組み、鷹揚に頷く。 「そんな眼光鋭く、世の中を恨んでます、な様子だから彼女の一つもできんのだ」 「そんなことをいっているお前はどーなんだ」 「……」 あ、止まった。 「ま、まあいい。それはともかく、借金の取り立てに来た」 「唐突だな。しかも俺は、借りてねー」 「……」 ゴホンと咳払いし、そいつは再び口を開く。 「将来、私に借金をするかも知れないから、取り立てに来た」 「たかりの間違いじゃねーか。それ」 「そうともいう」 「そこはあっさり認めるのか!」 俺の突っ込みは再び無視。そいつは地図を取り出すと一つの場所を指す。 「ほれ、居酒屋『鐘』、12日に開店したばかりだが評判はなかなかだ」 「……愚痴ぐらい聞けよな」 「くっくっく、交渉成立だな」 ――結局、朝まで生愚痴大会が開催された。 最後に除夜の鐘1080回打ち鳴らし大会を開くから強制連行な、と言い残しそいつは去っていた。 後に残るは12円しか入っていない財布のみ。 その財布の中身を見ながら――思う。 まったく……俺と違って見てくれはいいのだから、彼氏の一人くらい作れというのだ、妹よ。 冬の味覚 作:◆NN1orQGDus お題:「冬」「12」 1/2 お喋りだとは思っていたけれど、感心した。 まさかカニを食べる時までお喋りが止まらないとは思いもよらなかった。 「ん、食べないの? 美味しいよ。カニミソなんか特にね」 積み上げられる蟹の殻はゆうに12分匹はある。 「食べ過ぎると痛風になるよ?」 「ん、大丈夫。今日はヤケ食いしてるだけだから」 器用に蟹の身をほじくり出しながらパクパクと食べ続ける姿に、見てる私が胸やけしそうだ。味噌汁だけでお腹一杯になってしまう。 「ヤケ食いって、なにかあったの?」 「ん。バイトでさー、サンタやった訳よ。ミニスカサンタ」 「ええ? アンタが!?」 「そうだよ。やりたくなかったけどね」 「だけどあんたがミニスカサンタなんてしんじられないわ。だって色気ないじゃん」 そう。彼女は良く言えばスレンダーだ。出るべきところが出ていない。へこむべきところが出ていないのが救いだろう。 「わかってるよっ! どうせ私は寄せて上げるブラでも寄せて上げれませんよ!」 「無駄な贅肉がついてないだけ良いじゃん」 あの手の矯正ブラでサイズアップ出来ないのはある意味美徳だ。引き締まった身体という事になる。 「でもさぁ、アンタのどこに入るんだろうね、蟹」 「胃の中っしょ」 「そりゃそうだけどさ。感心するわ。蟹食べながら喋るし身体と小さいし」 「小さいは余計だろっ!」 怒りながらも蟹を食べるのをやめない。喋る口と食べる口とで口が二つあるのだろうかと妙な勘繰りをしてしまう。 でも、こんなに食べて大丈夫なのだろうか。 「あんたさぁ、大丈夫?」 「ん、平気平気。食べた分だけ動けば太らないし」 「そっちじゃなくてこっちの方」 人差し指と親指でまるを作る。心配なのはお金の方だ。食べた量が激しく違うのに割り勘だったらたまらない。 「んー、大丈夫。ミニスカサンタのカッコで稼いだから」 「――変なバイトじゃないよね?」 私の心配が解ったのか、やっと蟹を食べる手が止まった。 「ただの客寄せパンダだよ。ビラ撒くだけさ」 「ミニスカサンタは何処行った」 「そんなの知らん」 お腹一杯食べて満足したのか、彼女はお茶を飲んだ。 2/2 「ところで、クリスマスはどうする?」 「ケーキ買ってアンタんちで食う。独り者同士楽しくやろうよ」 「私が男を見つけたらどうする」 「んー、びっくりする」 びっくりとは失敬な。私は彼女を睨み付ける。 「睨まれてもねえ。だってさ、アンタ散々言ってたじゃん。クリスマス前に彼氏探したってろくな男残ってないってさ」 『クリスマスから現実逃避してるやつ?』 二人して同じ事を言ったのでハモッてしまった。そして、お互いに顔を見合わせて笑い出す。 まあ、色気より食い気の彼女に付き合ってばか騒ぎするのもたまには良いのかもしれない。 ――ジングルベル、鳴るのは鈴と腹の虫のどっちだろう。 了。
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ユウ「ったくなんなんだここは……早くアイツ見つけないと……」 マイカ「うー……なんでいないのー……?一人くらいいたっていいじゃん!ばか!はげ!」ウルウル マイカ「……はぁ、もっとちゃんと探そう……泣いちゃ駄目、泣いちゃ……」 ユウ「……!いた!マイカ、やっと見つけた……!」 マイカ「うぇ?ユウ……?ほんとにユウ?」 ユウ「俺以外に誰がいるんだよ」 マイカ「……うわあああん、遅いよばかあああ!」 ユウ「ごめんごめん」 マイカ「ばか!ユウのはげ!はげろ!」 ユウ「はげてないし。てかはげろってなんだおい」 マイカ「……一人ぼっちかと思った」ボソッ ユウ「あー……悪かったよ。多分他にも来てると思うから、後で一緒に探そうな」ナデナデ ユウ(……透けてら……あーあ、なんで死んだんだ。こういう時だけ実体化しねーかなー) 作者 銀
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2012年07月01日 (日) 23時20分-竹之内 大 北の大国には、一人のお姫様がおりました。それはそれは美しいお姫様でしたから、世界中から彼女を妃にと求める方々が昼となく夜となく城へ押し寄せました。ある者は、世界一の知者である自分こそが姫にふさわしいと主張し、またある者は、剣の腕で右に出るものがない実力を持つ自分こそが彼女の夫になるべきだと言いました。はたして彼女はこの中から誰を選ぶのか。皆の注目を集める中、求婚者たちの前に現れた姫は、こう宣言しました。 「私は、伝説の剣を抜くことのできた、選ばれし方と結婚します。」 伝説の剣。それはその国に昔から伝わる、知恵と勇気を兼ね備えた選ばれしものにしか抜くことができないという剣。男たちは皆、我先にと王城の中央部に位置する塚へと走り、その剣を抜こうとしました。しかし誰一人として剣を引き抜くことはできません。今でも美しい姫君は、選ばれし者が現れるのを待ち続けているのです… ************** 小国の王子である彼は、どちらかといえばなよなよとした性格の、ちょっと弱々しい感じの方でした。ある日、そんな彼に乳母が聞かせたのが、北の国の姫の物語。その乳母は、もともと北の国に仕えていた人でしたから、その話はとても生き生きしたものでありました。その話に深く感銘を受けた王子は幼心に、いつか一人前の男になって、見事その剣を引き抜いてやろうと思ったのでした。彼はそのために懸命に努力しました。毎日毎日必死に剣をを振り、本にかじりつくようにして勉学にも励みました。王様は一生懸命に努力する王子を大変好ましく思うと同時に、いつまでもそんなおとぎ話にうつつを抜かしている彼に頭を悩ませてもいました。そこで、王は王子に一つの提案をしたのです。 「18歳になったとき、北の国へ行って自分の力を試してみよ。もしだめだったら、私の跡を継ぐことに専念するように…」 王子は自分が剣を抜くことができるとは思っていませんでした。もともと自分は弱虫で、大した男ではないのですから。そんな自分をここまで育ててくれたのがこの物語。でも、もうここで卒業するべきなのかもしれません。王子は塚を改めて見つめました。心なしか昨夜見た時より大きいような気がします。緊張しているのでしょうか。王子は心を落ち着けるように大きく一つ息を吐き出すと、伝説の剣の柄に手をかけました。 ************** 「姫様本当によろしかったんですか。あんなインチキをして…」 「何言ってんの。ばれなきゃいいのよ。」 「ホントにばれないんですか。だって伝説の剣をうずめて偽の剣を刺しただけでしょう? さすがに誰か気づく人がいるんじゃ…」 「だってここんとこずーっと挑戦者いなかったのよ? そうじゃなきゃあんなもの見に行く物好きいないしわかりゃしないわよ。あーあまったく、ようやく私も結婚できるわ。」 「そんなこと言って、あのルール姫様が言い出したんじゃ…」 「まあ私も若かったからね。どの男がいいのかなんてわからなかったしさ…。選ばれし者なら問題ないだろと思って言ったのに、まさか見つからないなんてね? だんだんこの話、昔話みたいになって、挑戦者も現れなくなるしさ。あの王子様、なかなかカッコイイ子だったし、これが最後のチャンスかもって思うと…。さすがにこれ以上嫁き遅れるわけにはねぇ…」 そんな話をしながら花嫁衣装のお姫様は、旦那様のもとへと向かうのでした。
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タイトルが無いものに関しては無題で。 とりあえずまとめてるだけなので、問題があるようであればお手数ですが作者さん修正お願いします。 無題(恐らく) それはとても普通な正月 ときめきファンタジーⅢ 開けるな危険 嵐の中で輝いて 問い起せども創発の 命の輝き 無題(恐らく) 作:◆4c4pP9RpKE お題:内容参照 ミノタウルスって知ってる? 「藪から棒だな、確か……なんかの神話の怪物、だろ?」 そう、ミノス王の息子。 彼はなんとなくの知識で答える。私は確固たる自信と裏付けで答える。 確固たる自信と裏付け=ソースはWIKI。 「それがどうしたんだよ」 先を促す彼は焦れる。 話を焦らす私は笑む。 笑む私、実はS。 愉しい……。 ミノス王は、海の王ポセイドンに白い雄牛を借りたんだって。 だけど、あんまり美しい牛だから、借りパクしちゃった。 そうしたら、ミノス王の御妃さま、白い雄牛に惚れちゃったんだ。 雌牛のキグルミを着て、白い雄牛と、ヤったの。 そうして生れた鬼子がミノタウルス。 「……神話ってなんか結構グロいな」 グロいかな。でも、私は好き。 「はは、お前変わってるよなぁ」 彼はにやにや笑みを浮かべて、夜の街へと門をくぐる。 「じゃ、俺仕事いって来るわ」 いってらっしゃい。 彼はホスト=そしてヒモ。 きっと帰ってくるのは、私が、正月の風物詩、面倒なハガキをコタツで数えて居る頃だ。 初日の出はクラブの帰りに、ラーメン屋で拝むのだろう。 彼は借りて来た綺麗な雄牛。 私は欲情する愚かな妃。 お腹の子が丑年にうまれる予定なのも、なんら不思議では無いのかもしれない。 彼にいつ話すべきか。 了 それはとても普通な正月 作:◆7FtGTaokck お題:内容参照 空に雨の流星が翔け隣の犬がにゃーと鳴く頃、目が覚めた。 カーテンを開けると海のような青空に白い雲。新年の始まりである正月に相応しい天気だ。 門が乱暴に開く音が聞こえる。音はドアを開け、目の前の正体を現した。 「明けちゃったじゃん!」 「明けたねぇ」 「初日の出見忘れたよ!」 ああ、そういえばそんな約束もしていたな。 彼は笑いながら部屋のコタツにもぐりこむ。 「はい、はがき」 「ありがとね」 数枚の四角い紙にはどれも型に嵌めたような言葉が連なっている。 一枚だけ筆だと思しき物で力強く書かれたものがあったが残念なことに達筆すぎて読めない。 「あ、それ私が書いたの。うまいでしょー」 ほんのりと膨らんでいる胸を張る。サイズはきっとBかC。日本人はこのくらいがいい。 だが最近のばk……いや、日本人といえばおっぱい=巨乳と来たもんだ。全く腹が立つ。 あんな巨乳なんざアニメだとかゲームだとかで十分なのだ。最もそこでも必要はないと思うがね。 必要以上に脂肪の付いたものなど、肉風s……いや、牛の乳となんら変わりないのだ。 「ど、どうかしたの? 私の顔に何か付いてる?」 顔を赤くして目線を逸らす彼女。実に可愛らしい。彼はそう思う。 「何も付いてないよ。さてと、まずはミミズの解読を始めようか」 「ミミズ? ……ミミズだとぉ!」 彼の頭を殴る彼女。笑いながら受ける彼。 「あー、初詣も行かないとな。振袖着てこないのか?」 「面倒だもの」 いつものコートを手に取ると外へと出る。 シンとした空気が新年が来たことを教えてくれる。 「正月だねぇ」 彼はぽつりと呟いた。 ときめきファンタジーⅢ 作:◆LNPZY.1xLA お題:内容参照 1/2 「この門を通ったからには、屍となるかこの私を倒すしか出るすべは無い。それは 知っているのだろう? 勇者よ」 「まあ、そうなんですけど……」 仲間を置いて単身その部屋に入った青年がぼやいた。城の最奥だけあって、 豪華な部屋である。光源は蝋燭のみ、床は赤絨毯。青年の引き締まった体つきと いかにも上等な剣は彼を強く見せていたが、顔つきは「少年」ともいえそうな幼さを 残していた。戦闘ともなれば眼光鋭く魔物共を薙ぎ倒してきたものだが、今回ばかりは ボスキャラを前に――げんなりしていた。 「俺、魔物退治は平和のためにやってるつもりだったんです」 「ほう?」 男は少し顔を伏せた。白に近い金の髪が、サラリと顔にかかる。魔物は面白がるように 相づちをうつ。 「日常を取り戻すんだ、って。だってそうでしょう? 今のこの有り様は、ねじ曲げられた 狂った世界なんだ」 海のように澄んだ碧眼に、影がよぎった。 「ある日いきなりこんな世界に放り込まれた。俺がじゃない、俺達みんながだ。突然 こんな外見になって、電化製品は姿を消して、なのに病院なんかは都合よく不自然に 変わりはなくて」 彼が話すのはまぎれもない真実であった。なんの前フリもなく、「魔王」と名乗る 超科学的な第三者に歪められた――この国の過去。 「『倒したら全て元に戻してやる』? じゃあ倒しますよ。RPGのキャラクターなんて 自分で本当になるもんじゃ無いんです」 「それがどうした。今さらそれを言うのか?」 魔物の巨体が、笑うように震えた。彼ら魔物を倒すには、弓、剣、棍棒などの原始的な武具と 魔法しか手はない。青年が超人的な体力と剣術を得て勇者となった日、この国からは 重火器が消え、一部の人々が手から火が出たりする能力に目覚めた。魔物を拉致して 研究しようと考えた者は多かったが、研究施設はことごとく魔王により封印されていた。 「だって今日、正月ですよ? こたつにみかんで、テレビ見ながら家族で年賀はがき来るの 待ってる日ですよ? それなのに、現実を見れば勇者が盗賊や魔法使いと旅に出て、 踊り子が酒場で踊って、王様が城で困っている。なんだよ『王様』って、ここ 日本だろ!?……こんな世界は間違っている。ゲーム脳だかゆとり世代だかの俺らですら、 心底そう感じている。――そのつもりでした」 2/2 王様は、かつてはとある中小企業の副社長だったらしいと噂に聞く。 マスメディアの大抵が無い今はそれが精一杯だ。勇者は苦笑とも自嘲ともつかない笑みに 顔を歪める。 「映画に出てきそうな虫みたいなクリーチャーの群れを殲滅した時も、俺の身長よりも ずっとデカいバケモノを殴り飛ばした時も、初めて生で見たドラゴンの首を断ち切って やった時も。楽しんでなんかない、強さに溺れても、『勇者』に酔いしれてもいない、 つもりでした」 勇者は笑う。目の前の魔物を見据えて。 「違いますね、俺。かっこいい自分が好きで、それがモチベーションだったんだなあ」 ゆっくりと剣を構える。この程度のダンジョンなら何度も攻略してきた。やる気が なくても恐らくは一撃で決着はつくだろう。だからこそ勇者は自分を鼓舞するでもなく、 哀れな化け物に本心を吐露する。 「倒すんなら、格好よくて強そうな、ゲームとか映画みたいなクリーチャーがいいです。 だから今ものッすごい萎えてるんですけど、勇者として、まあ、やることはやりますね」 勇者は小さく息を吸った。その呼吸を察知し、魔物は神経を尖らせ、じりっと蹄を 持ち上げる。 「――ぅおりゃあッ!」 一閃。剣がその身を煌めかせ、魔物に襲い掛かる。勝負は呆気なくついた。勇者の一撃は 易々と皮を破り肉を絶ち、骨すらも分かつ。魔物は自分の死に気づいているのだろうか、 文字通り一刀両断にされ、断面から鮮血を噴き出す。半身がドサ、ドサ、と落ちた。 四肢を痙攣させ、光を失った瞳が虚空をうつす。 「はぁ……」 剣を空中で振る。買ったばかりの傘のように血糊や油は弾かれ、輝きを取り戻した。 それを鞘に収め、勇者はガラガラと壁の崩れる音を聞く。退路だ。いつのまに日の出の 時刻を迎えていたのだろう、現れた廊下の窓から差し込む光がまぶしい。勇者はパーティーと 合流するために歩き出した。部屋を出る前に、ちらりと魔物をかえりみて、再びため息をつくと 歩を進める。 残されたのは、乳牛と見た目は何一つ変わらない魔物の死体だけだった。四つ足で 白と黒の、ちいさな角の。 開けるな危険 作:◆phHQ0dmfn2 お題:「門」 1/2 『この門、開けるべからず』 まったく困ったものだ。開けるなと言われたら開けたくなるのが人情だ。俺の場合、特 にその傾向が強いらしい。昔から『やるな』と言われると、ついついやってしまい、痛い 目に遭っている。 門に書かれた警告文を見るたび、開けたくて開けたくてたまらなくなる。しかし、そん なことはできないのだ。 重く分厚い鋼鉄製の扉の前で、ひとりため息をつく。いつものことだ。 今頃、門の向こうはどうなっているのだろう? 暇さえあれば、そんなことを考える。外の様子を知る手だてはない、そのことが余計に 想像心をかき立てる。花畑が広がる楽園だろうか? いや、おそらくは地獄が広がってい るに違いない。放射能にまみれ、荒れ果てた大地が…… 今から五年前、世界中を巻き込んだ核戦争が起こった。 一発の核ミサイルが発射されたのを皮切りに、連鎖的に報復攻撃が始まり、あっと言う 間に世界中が焼き尽くされた。軍人だった俺と少数の者たちは、この地下施設にいたおか げで、たまたま難を逃れることが出来た。他にも生き残った人類がいるかもしれないが、 通信、交通手段が途絶えた今となっては知る由もない。 2/2 この施設は外界とは完全に隔絶されている、放射能の心配はない。地熱エネルギーで装 置を動かし、食料生産から水・空気の循環まで、必要なことはすべてまかなえる。 ここは、人類最後の生き残りが乗る箱舟なのかもしれない。 しかし、そんな生活を続けた俺たちの体は、次第に弱っていった。やはり人は大地に立 ち、陽の光を浴びなければ生きていけないのだろう。仲間は一人、また一人と死に、俺が 最後の生き残りというわけだ。 そして、俺の体にもついにガタが出始めた。おそらく長くはないだろう。 俺は決心した、門の外に出よう。どうせ死ぬなら大地の上で死にたい。それが人間らし い死に方というものだ。 制御装置にコードを打ち込みロックを解除する。これで出られる。重い足を引きずりな がら、門の前にゆき、開門スイッチを入れた。 だが扉が開くその瞬間、緊張の糸が切れたのか全身の力が抜け、俺はその場に倒れてし まった。目の前が暗くなり、意識が薄れる。 残念だ……死ぬ前に、一目でいいから外の世界を見たかった。まあ天罰だろうな。何し ろ、世界がこんなことになったのは全て俺の責任なのだ。 『このボタン、押すべからず』 核ミサイルの発射係だった俺は、誘惑に負けボタンを…… 嵐の中で輝いて 作:◆NN1orQGDus お題:「正月」 1/2 お正月も三が日の最終日だと言うのに、彼は浮かない顔だ。 お雑煮代わりのお汁粉が駄目だったのかな、と思ってしまう。 「ねえ、やっぱりお雑煮の方が良かった?」 「……いや、別に?」 素っ気ない返事がちょっとイラつくけれども、暗い表情が気になって仕方ない。 「ねえ、どうかしたの? 元気ないよ。気分転換に何処か遊びに行かない?」 彼の目をじぃっと覗き込けれど、濁った瞳は私の姿を映さない。 「……ちょっと静かにしてくれないか。今日はそんな気分じゃないんだ」 ボソボソと呟く声には、張りがなくて、まるでカトンボみたいだ。 「でもさあ、心配だよ。じゃあさ、ビデオでも見る? 勧められたから撮っておいたんだよ、ガンダム」 少々オタク気質のある彼が布教に近い感じで勧めて来たガンダムを見れば彼の機嫌も良くなるかな、とビデオをセットした。 テレビの画面にロボットが出てきて、うにゃうにゃびゅんびゅんと、パキューンパキューンと光線銃を撃ち合って戦い始めた。 「ねえ、スゴいよね。武力介入だってさ」 「……違う! こんなのじゃ駄目だ!」 突然、彼はクワッと眼を大きく見開くと、コタツの上に飛び乗る。 「ちょ、ちょっと! やめてよね! コタツが壊れる……じゃない?」 我が家唯一の暖房器具が壊されたら地獄だ。彼を怒鳴りつけて睨むけど、彼の勢いに気圧された。 なんと言えば良いのやら、湯気が出そうな勢いだ。 「“やめてよね”じゃない! オマエ、今日が何の日かわかってるのか? 卑怯なジオンがブリティッシュ作戦でアイランド・イフィッシュは毒ガスだぞ? 保志は関係ないんだ、星なんだ!」 呆気にとられてしまった私をビシッと指差して、彼は更に続ける。 「シロウは目の前で家族が血を吐いて死ぬんだぞ? 最初に殺したのは味方なんだぞ? ナダさんは薬物で身体ボロボロで頭飛ばされても前に進んだんだぞ?」 テンションが上がり過ぎたのか、うおぉ、と叫んで怒りながら泣き始める。 「ね、ねえ。指差さないでちょっと落ち着こうよ、ね?」 「ザク相手に生身だぞ? 絶望的なんだぞ? どんどん死んでくんだぞ? 遺体すら残らないで血煙だぞ? オマエはなんとも思わないのか?」 2/2 コタツの上で咽び泣く彼の言葉は物悲しい響きだ。もらい泣きはしないけれども、別の意味で泣けてきた。 「え、えーと……ザク? 確か……ルナマリアじゃなくて……シャア……だっけ?」 記憶の片隅にから僅かばかりの知識をインディ・ジョーンズばりに発掘したけど、やっぱりそれは地雷だった。 せめて吉村先生にしておけば、と思ったけれども、時すでに遅しだ。 ギラギラと眼を輝かせた彼が、奇声と共に私の胸に飛び込んできた。 「違う! オマエは種厨か? それともジオンなのか? 戦争はポケットの中で俺はオマエと添い遂げる!」 「や、やめてよ! 服が汚れるじゃない!」 折角おめかししたのに、おニューの服が涙と鼻水と涎で汚される。 それだけじゃない。のし掛かられたから絵的にかなりヤバイ。危険信号が点滅する。 でも、こういうのも悪くないな、と思ったら、彼が急に真顔になった。 「……オマエ、結構小さいんだな」 何が? 胸が? その言葉が私から理性と人間性を奪った。 「余計なお世話! 歯を食い縛れっ!」 握り締めた左拳が彼の顔面を捉える。 大袈裟に吹っ飛びながら彼はニヤリと笑う。どうかなってしまったのだろうか。 「これが若さ……じゃない! ここは“親父にも……”だろ! 俺は駄目だ! ガンダムになれない!」 訳の解らない事を叫びながら、彼は床に頭をガンガンと打ち付ける様に土下座しはじめた。 打ち所が悪かった……と言うよりは、浅かったのかも知れない。呆れて出るのはため息ばかり。 「レビル将軍、ゴップ閣下! 申し訳ありません! ジオンに兵無しです!」 なんなのこのシュールな光景。いったい私にどうしろと? 了。 問い起せども創発の 作:◆LV2BMtMVK6 お題:内容参照 この歳になって、わたくしにも欲が出てきたように思う。 我が事を思うとは面妖な謂いだが、はっきりと意識されたのはごく最近のことではあるのだ。 欲と一言に云ったが、欲と言っても物欲の類いではない。金銭は不浄にあらず、 富貴は汚物にあらず、財貨は塵芥にあらざれど、不自由なき程あれば求めるにや及ぶ。 所有欲や色欲は元より身の枷、望んで追うに値せず、人らしく生きる妨げに過ぎぬ。 貴方は欲に引き回されて生きてはいまいか。いや、これは失敬、生き方は自由。 だが、覚えておいて頂いていつの日か何かの助けになるなら重畳。 わたくし愚考を幾重か重ねて上の如き思いに至るは閑話休題。 さて、欲に話は戻る。その欲が何であるとはっきり明言する事は出来ないのだが、兎も角は欲である。 恐らくはひとつの体験がその思いを強めたものらしい。 少しく時間を頂こう。 わたくしがこの田舎へ移って来てから数週が過ぎた。この辺りは大分鄙びた町である。 その鄙びた町の、これまた外壁の白漆喰がくたびれたような古旅館に逗留して居る。 もっとも、この町も往時は大分栄えたらしく、旅館の玄関にも名士たちの白黒写真が掲げてあった。 なんでもその昔には皇太子の御幸も賜ったところらしい。 これと云ってすることもなし、暇には事欠かない。 不思議なもので、忙しくしていた時分にはそれこそ次から次へ、 しなくてはならない荷物の山を背負って心臓破りの坂を登るようであったものが、 いざ時間に余裕ができるとなると、存外に手持ち無沙汰である。 朝夕毎に行水を遣う。ここらは温泉が出るのだ。山ひとつ越えると硫黄泉があるのだが、 こちらは単純アルカリ泉というらしい。 わたし個人についていえば、ここの湯のぬるぬるとした心持ちの感触がなかなかに気に入って居る。 この間聞いたところによれば、珪酸がぬるぬるの正体であるという。要は石英と云うか、 硝子のまろい微粒子であるのだろう。 まあ、なにかにつけて良いところである 。人々の顔にも、日向の蜜柑かごのような温かみがある。 暇だと言ってもそうもてあますこともなく、日中は文机に向かい由なき事をつづり、 陽が落ちれば床につく。飽けば短冊を持って辺りを歩く。自分では別段これと言ってすることもないが、 辺りをずっと歩くのは心地よいものではある。海岸に歩を進め、山に登る。こうして詠んだ句が二十あまりになった。 田舎の漁村ではあるが、人の心に訴える何かがあるものらしい。 来月で二十歳になる。成人というのはどんな感慨を持つのかしらん。 自分は半隠居のような日々を送る十九歳である。この間女将に成人するということを告げたら、面白い事を聞かされた。 「それなら、海志の門をくぐられるといい、昔からの習わしで」 門のようになっている海蝕洞のことらしい。新成人が海中を歩いてその門を通る習わしなのだという。 誕生日の前日、夜半過ぎに旅館の勝手を出た。その場所で日の出を見るつもりであった。日の出が美しいと聞いていたのだ。 五時間歩いて、その場所を見下ろす高台に着いた。満天の星空である。宿を出たときには頭上にあった、 細い月が暮れかかるころで、明けの明星がひときわ明るい。細かくちりばめられた星屑がはっきりと見えた。 夜の空はあまりにも近く見えて、星に触れる事さえ出来そうに思えた。天球は銀蒔絵の螺鈿細工と見まごうばかり、正真の「星空」である。 海面に星々が映って、波に揺れる。 このとき、自分のうちに一つの感情が生まれたのだった。すなわち、欲。 それは生きたいというのでもなく、物を得たいというのでもなく、むしろ体験したいというものであった。 心を揺り動かさずにはおかぬこの光景を、あるいは自然界の壮大なる神秘を、あるいは人間の心映えの美しさ、手の技の巧緻を。 魂を震わす感動を得たいと願ったのである。 やがて、漆黒の世界の上半分が切り取られるように薄くなり、突如として水平線に光の直線が現れる。 日の出だ。太陽がちらりと現れ、朝の刃先のような光の中に世界の輪郭がふちどられていく。海中に鋭い影がくっきりと浮かび上がる。 古代ギリシャの海上神殿のごとき、柱状節理の海蝕洞。海が空と交わるところはいよいよそのコントラストを深めてゆき、遠く藍の光と青の輝きが交錯する。 もはや、太陽は完全に姿を現していた。海志の門の日の出である。 海猫が鳴いた。 いま、その門へと、一歩を、踏み出す―― 命の輝き 作:◆FtC/MWKcXA お題:内容参照 1/3 『あなたにしかできない仕事、あります』 仕事無し、彼女も無し、ついでにしばらくの予定も無い俺にそのハガキが届いたのは大晦日のことだった。 冷蔵庫から取り出した牛乳片手に、派手な色でゴチャゴチャと書かれた文字を目で追う。 どう考えても胡散臭い。 誰がこんなもの送ってくるんだろう、そう思いながらこたつに潜り込もうとした俺は文字通り跳びあがった。 こたつが、掘りごたつになっていた。 しかも足を入れる窪んだ部分に違和感を覚え、布団を捲った俺はそのまま固まった。 ──そこには海が広がっていた。 「ええぇぇぇえええ!?」 思わず言葉をもらした俺に、今度はどこかから声がかかる。 「遅れてすみません。あなたをお迎えにあがりました」 たかだか二十数年の短い人生だが、これほど驚く出来事があっただろうか。 俺はその声の主をまじまじと見た。 相手は全く動じない様子で続ける。 「早速仕事の説明をしたいのです。私と一緒に来ていただけますか」 「…………な、なんで」 「あなたが選ばれた人間だからです」 全く訳がわからなかったが、海にうかんだまま話しかけるそいつの話によると その仕事は俺にこそふさわしい仕事なのだという。 決断は今日中にしなければいけないとも。 俺がそいつについて行く事にしたのは、単なる気まぐれだったのか、 『俺にしかできない』というのが思いのほか嬉しかったのか。 とにかく、俺はその仕事の説明を受けるべく、どこからどう見ても牛の姿をしたそいつの背に跨った。 2/3 俺を乗せた牛はそのまま沈んでいき、海の中を泳ぎだした。 牛を助けた覚えの無い俺でも、おとぎ話と同じように、水の中でも息はできるようだ。 何も言わない牛に『選ばれた人間』とはどういうことかと問いかけると、条件をクリアしているとの答えが返ってきた。 「条件?」 「ええ。あなたは毎日私からでる白い液体を美味しそうに……」 「はぁ!? ……ああ、牛乳のことか……」 「つまり、その量が見事基準値を越えているのです。私どもの命を大切にしてくださっているのと同じこと」 牛乳を毎日飲んでいることが採用条件なのか? 納得できないまましばらく行くと、やがてやたらと大きくきらびやかな門に辿り着いた。 そこをくぐると、今度は城としか形容できない建物が現れ、俺はそこで下ろされた。 二本足で立つ牛たちに案内され、その城の中へ足を踏み入れると、そこはまるで竜宮城のような世界だった。 豪華な食事、旨い酒、美牛たちの舞い踊り…… 当初の目的を忘れてしまいそうなほど、そこは夢のような空間だった。 辺りを見渡すと、俺のような客人がそこここでもてなしを受けている。 誰も彼も、仕事の説明を受けに来たようには見えない。 「なあ、ちょっと」 「はい、なんでしょう」 分厚いステーキを運んできた牛を捕まえて問いかける。 「面接とか説明とか……どうなってるんだ?」 「ご心配には及びません。ここにいらした時点で合格のようなものなのです。間もなく始まる仕事の為にも 皆様には精をつけていただきませんと。さあ、どんどんお召し上がりください」 にっこりと微笑んで立ち去った牛を見送り、そういうことなのかと納得して俺は新たな料理へと手を伸ばした。 やがて俺は満腹感からか、他の人間たちと同じようにいつの間にか眠りに落ちていたのだった。 3/3 「準備が整いました」 「ご苦労だった。人数は集まったか?」 「はい。ここ数年は人材が有り余っています故、頭数を揃えるのは容易いことでございます」 先ほどまで賑わっていた宴の会場は、今はすっかり静まり返っている。 あの後も次々と人間が連れてこられ、その度に料理や酒が運ばれた。 部屋はすでに片付けられ、連れて来られた人間たちが倒れて積み重なっている。 「人数を集めるのに苦労せんと言うのも、悲しいことじゃなあ……」 「仕方のないことです。そういう時代なのです」 部屋の中央に置かれた大きな椅子に腰掛けた老体は、立ち上がってひとつ大きくため息をついた。 「それじゃあ、始めるかの。時間に間に合わせねばな」 そう言うと彼は人間の山に手をかざし、何かを唱え始めた。 周りの牛たちも倣って手をかざす。 やがて、倒れた人間一人一人から白く輝く玉のようなものが浮かび上がり、用意された円形の籠に収められていった。 次々と浮かび上がる玉の数が次第に減っていき、全ての人間から出尽くしたと思われたのを確認した後、老人は牛たちに声をかけた。 「時間になったら打ち上げてくれ。時間を間違えんようにな」 口々に返事をして、牛たちは籠を何処かへ運んでいった。 「……今年もやってしまった」 「仕方ありません。今はこれしか方法が無いのです」 肩を落とす老人に、付き従っていた牛が言う。 「新年に日が昇らなければ、人間たちは希望を失うでしょう。仕事も無く、頼られる相手もいないものの魂を使うしかないのです」 「いくら太陽を再び輝かせるためとはいえ、人の命を使うなどと……わたしは……」 「先代の神が考え出したこの方法しか今は無いのです。来年になれば、寅たちが何か別の方法を思いつくかもしれません」 「…………」 「顔を上げてください、ほら、日の出です。新しい年が始まります」 すっとその場を離れた牛が、窓を開け放った。 言葉無く見つめる上空に、牛たちが命を吹き込んだ今年最初の太陽がゆっくりと昇り始めた。
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2012年11月04日(日) 00 34-古夢 いつだって埋まっていたのその胸は 私以外の誰かのもので 偶然に触れあう視線 絡む影 重ねる指は明らかな罠 囁いた私の耳元動く風 「あきらめた、もう」抱きしめる腕 アキレスを知らぬ愚かな幼さで 刹那の勝利を噛みしめた夜 知らぬ間に距離開き遠くなる君に はじめて知った敗北の味 あき風は冷たく指先通り過ぎ 去りし温度を握りつぶせり *** なにか、書きたかった… 一個目だけ「空きがなかった」です。 なるべく「あき」を入れたかったんですが、微妙な仕上がり… 無理やり感が……まあいいやっ← 4個目は、自ら弱点をつくったことをor自らの弱点を知らず、ってことです。勝ったと思っているけれど、負けている、みたいな。
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最近、幼稚園のプレで知り合ったママさん…。ちょっと苦手かもしんない…。 悪い人ではないと思うのですが、私、べったりした人づきあい苦手なんですよね。 何をするにも一緒、トイレも一緒みたいな…(笑)。 「私、お友達少なくて、仲良くして下さいね!」と声をかけられ、 気軽にアドレス交換してしまったのが、失敗だったかも。 大した用でもないのに、毎日、プチ日記風のメールが来るようになりました…。 やっぱり、それなりに返信してあげないとまずいんだろうなぁ…。 と思い「それはよかったね」「お疲れ様」「大変だったね~」と 感想を交えたひと言メッセージを返していたのですが…。 先日、子供が調子悪くて小児科に行ったり、ちょっとバダバタしていた日が続いて、 メールの返信ができなかったんです。そうしたら「なんか、さみしい。 メール読んでくれてる?お返事ほしいな~!」みたいなのが来た…。 やっぱり、このママさんとはペースが合わないのよね。 どうやったら傷つけずにフェードアウトできるかなぁ…誰か智恵を貸して!!